未だ全面解明に至っていないエレベーター事故
2012.1.1
エレベーター事故被害者遺族
市川 正子
平成18年6月3日、港区のシティハイツ竹芝で、シンドラー社製エレベーターの扉が開いたまま突然上昇し、エレベーターから降りはじめていた16歳の息子の命を理不尽に奪いました。
フェールセーフではなかったエレベーター
エレベーターのブレーキが利かなくなってしまったら!?
事故当時、すでに全国に設置されていた70万基のエレベーターには、ブレーキが利かなくなったときに、「かご」の上昇を停止させる安全装置の設置が義務付けられていませんでした。(非常停止装置は設置されていましたが、この装置は「かご」の落下を停止させるためだけのものでした。)
このため、ブレーキが利かなくなると、扉が開いたまま上昇する事故を防ぐことができない状況だったのです。
だからこそ、扉が開いたまま上昇する重大事故を防ぐためには、二重ブレーキが必要でした。
なぜ日本は、二重ブレーキ設置義務化が遅れたのか。
海外ではカナダ、アメリカ、韓国、香港、中国等ですでに二重ブレーキの設置が義務化されていました。
日本では、このエレベーター事故をきっかけに平成21年9月に二重ブレーキ設置がやっと義務化されました。
ところが‥‥既存不適格不遡及のため義務化される前の70万台のエレベーターは、
二重ブレーキ設置義務化の対象外となっています!
しかしエレベーター利用者は、
どこのメーカーか、どこの保守点検会社か、二重ブレーキが設置されているかなどを意識し
て利用してはいないのです。
利用者の安全を平等にするために、全てのエレベーターに二重ブレーキを設置していただきたい。
事故から5年7カ月、46万もの署名を提出し、今も訴え続けています。
未だに、このエレベーター事故の原因は全面解明に至っていません。
なぜなら、捜査機関が押収した証拠の調査が未だにできていないからです。
なぜ、事故が起きたのか。なぜ、防ぐことができなかったのか。何が、真の原因なのか。徹底的に調査して事故原因を究明し公表していただきたい。そして、真の事故原因の教訓を再発防止と安全に活かしていただきたい。
そのためには、再発防止を目的とした、独立した中立公正な強い法的調査権限を持つ事故調査機関が必要です。
しかし、現在、エレベーターやエスカレーター・ジェットコースター等の事故には、再発防止を目的とした独立した中立公正な強い法的調査権限を持った事故調査機関がありません。
現在、エレベーターは、70万台設置されています。そして今もエレベーター事故は起き続けています。
裁判の状況
平成20年12月12日 民事訴訟提訴、しかし、刑事の公判がまだ始まらず、捜査機関が押収した証拠が開示されていないため、民事訴訟の進行も事実上ストップしている状態です。
平成21年7月16日 東京地方検察庁が業務上過失致死罪で、2社(シンドラー社・SEC社)の5人を在宅起訴しましたが、刑事の公判はまだスタートしていません。
再発防止を目的とした事故調査機関は、迅速に事故原因を解明し、再発防止に活かしていただきたい。
そのために、刑事の公判で証拠が開示されるのを待つことなく、迅速に全ての証拠を調査することのできる法的調査権限をもった独立・中立・公正な事故調査機関を設置していただきたいのです。
安全・安心な生活を目指すためにも、ご支援とご協力の程よろしくお願いいたします。
2011年
2010年3月18日 前原誠司国土交通大臣は、エレベーター事故被害者遺族宅訪問
(運輸安全委員会に、エレベーターなど昇降機で起きる事故を調査する専門部会を設けることを検討する旨表明)
8月25日 前原誠司国土交通大臣に要望書提出
(東京都港区「シティハイツ竹芝」エレベーター事故原因の早期全面解明と、独立した中立な第三者の事故調査機関の設置を求めての要望書)
12月3日 管直人内閣総理大臣、馬淵澄夫国土交通大臣に要請書を提出。
(港区「シティハイツ竹芝」のシンドラーエレベータ社製エレベーター事故について事故原因の早期全面解明とそれに基ずく再発防止策の早期実施を求めるとともに、独立した中立な第三者による事故調査機関の早期設置を求める要請書)
2011年
1月15日 事故調査機関シンポジウム
1月22日 消費者ニュース、リレー発表
1月24日 なぜなぜ分析勉強会
1月23日 ワンコイン会
1月27日 国土交通省「既設エレベーター安全向上WG」傍聴
1月29日 空色の会・JR福知山線事故・負傷者と家族等の会主催の「被害者視点で考える、安全で安心できる社会」座談会
2月4日 参議院会館訪問
2月9日 国土交通省「既設エレベーター安全向上WG」傍聴
2月23日 国土交通省「既設エレベーター安全向上WG」傍聴
2月2日 大畠 章宏国土交通大臣、蓮 妨内閣府特命担当大臣に要請書提出
「東京ドーム、シティアトラクションズ・コースター転落事故について」
2月13日 ワンコイン会
3月15日 東武鉄道竹ノ塚踏切事故慰霊式参加
3月25日 事故調実現ネット
4月20日 なぜなぜ分析勉強会
4月25日 国土交通省「既設エレベーター安全向上WG」傍聴
5月1日 渋谷・署名活動
5月14日 信楽高原鉄道事故慰霊式参加
5月15日 代々木保育集会で署名活動
5月18日 事故調実現ネット
5月24日 なぜなぜ分析勉強会
6月17日 国土交通省「既設エレベーター安全向上WG」傍聴
6月30日 なぜなぜ分析勉強会
7月25日 国会議員会館訪問
7月29日 事故調実現ネット
8月3日 なぜなぜ分析勉強会
8月8日 国土交通省「既設エレベーター安全向上WG」傍聴
8月12日 JAL123便御巣鷹山事故慰霊式参加
8月20日 ワンコイン会
9月13日 第11回民事裁判
9月18日 小山台高校文化祭(88の会バザー参加)
10月6日 事故調実現ネット、国土交通省住宅局建築指導課訪問
10月7日 国土交通省住宅局建築指導課訪問、なぜなぜ分析勉強会より質問状を提出
10月20日 なぜなぜ分析勉強会
10月23日
健康祭り署名活動
10月30日 ワンコイン会
11月3日 保育決起集会(日比谷公園)署名活動
11月29日 国土交通省住宅局建築指導課訪問、質問状の回答
12月11日 東京母親大会、署名活動
12月16日 なぜなぜ分析勉強会
2012年1月16日 なぜなぜ分析勉強会
再発防止を目的とした事故調査機関は、各省庁の下、部会の下では、制限と限界があり、どこからも影響をうけない場所、独立した中立公正な第三者の事故調査機関を設置していただきたいと、消費者庁の事故調査機関のあり方に関する検討会で、委員として訴え続けてきました。
不十分な原因究明や不十分な再発防止対策によって事故がくりくり返されたり、事故の被害者遺族をさらに苦しめるようなことのないよう切に要望します。
安全・安心のある生活を目指すためにも、みなさまのご支援とご協力をよろしくお願いいたします。